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新刊配布物のお知らせです。
「50で綴る、愛のうた」(おまけ冊子つき)
「うんぽこめのもっそ」A5版/40ページ/400円
※小龍*ユゥイ+ファイ
では!明後日会場で!お会いできるのを楽しみにしております!!
続きにオフラインページに載せることが出来なかったうんぽこのサンプルをあげておきます。
◇ウン・ポーコ
ふっとユゥイが物音に気付き、寝室のベッドの上で耳を澄ませた。先ほど聞こえたのは玄関のチャイムだろうかともぞりと寝返りを打ち、ベッドヘッドに置いた時計に目をやる。
時刻は午後二時を少し経過し、薄暗い部屋はしんとしている。締め切ったカーテンから零れた一筋の光に目を眇め、ユゥイがふらりとベッドに腕を突いて身を起こした。その時にまたぴーんぽーん、と間延びした音が響き、寝ぼけた頭でぼんやりと寝室の出入り口を見遣った。
ここは堀鐔学園の職員宿舎で、エントランスは入居者しか入ることが出来ない。しかし先ほど聞こえた呼び出し音はエントランスからではなく玄関先のもので、首を傾げながらやっとユゥイが立ち上がった。この呼び鈴を押す人物は限られているのだが、今日は午後から体育部と文化部のミーティングで、ユゥイが思い描いたふたりがこの呼び鈴を押すことは出来ないはずだ。
何かあったのかなと、無造作に放っていた上着に袖を通し、玄関へ続く廊下を裸足で歩き、ガチャ、と玄関を開けた。
いつもの高さに蒼い瞳も紅い目も無くて、あれ?と内心首を傾げ、ふらりと視線を落とすと、そこには予想もしなかった人物が自分を見上げていた。
「先生。まず誰が来たのか確かめてからドアを開けて下さいよ」
無用心ですよ、といつもと同じように小言を落とす相手に、ユゥイがぽかんと口を開いた。
「……え?小龍くん?エントランスは?」
「バスケ部の先生に届け物があって、その帰りに寄ったんです」
エントランスの鍵は顧問の先生に開けてもらいましたと続けると、小龍が突っ立ったままのユゥイに首を傾げた。部屋から外開きのドアを押し開けている不自然なユゥイの姿勢に、小龍が足でドアを留め、一歩ドアの内側に身体を割り込ませる。
「ユゥイ先生。休まれてたんですか?」
「ああ、ちょっと体調悪くて」
「終業式の日もちょっと体調悪そうでしたね」
自分の兄が言った内容とまったく同じことを再び告げられ、ユゥイが小さく息をついた。それで?と玄関とドアの間に身体を滑り込ませている生徒に言葉を落とす。
「?何ですか?」
「どうしたの?」
何か用?とユゥイが肩を竦めると、それにはしばし小龍が考える素振りを見せた。首を傾げたままユゥイを見遣り、それなりの用事を思いついたのか口を開く。
「寒くないですか?」
「部屋には、いれないからね」
ゆったりと、文章を区切ってのユゥイの言葉に、小龍は首を横に倒したまま言葉を続ける。
「今日はお昼には帰る予定だったんですよ。でも部長から渡して来いって言われて遠回りして、すっかり身体が冷えたんです。寒いですね」
そこでわざとらしく言葉を切り、寒そうに小龍が自分の腕に手を這わせた。数度自分の腕を擦り、ちろりとユゥイを見上げる。
「ここであたたまったら帰りますから、お茶、煎れてくれませんか?」
「残念。部屋に入れてあげたいんだけど、特定の生徒を特別扱いするのは禁止されてるんだよ。早く帰りなさ、」
「、くしゅん!」
言葉の途中を遮られ、ユゥイが目を細めた。視線の先には鳶色の瞳がいたずらっぽく見上げていて、思わず低い声が出る。
「……どこからどこまでが演技?」
「ひどい。本当に寒いのに。おれが風邪引いたら先生のせいですからね?」
生徒に詰るように見上げられて、さすがのユゥイもため息を落とした。
「ホントに、紅茶飲んだら帰るんだよ?」
「はい」
にこりと小龍が笑うと、ユゥイが自分の身体を横にずらし、空間を空けた。
「じゃ、どうぞ」
出来た空間にやってきた小龍にまっすぐ行って左側の部屋で待ってて、と言葉を落としながら、ユゥイが玄関のドアを閉めた。